
住み慣れた我が家は、いくつもの部品に分解して値段が付けられます
自宅は、まとめて一つの値段が付くわけではありません。土地は土地、建物は建物として別々に評価し、そこに門や塀、庭木、家財などが加わります。
「固定資産税の通知書に書いてある金額でいいのでは」「築40年の家に、まだ値段が付くのだろうか」「庭の物置まで数えるなんて考えたこともなかった」。名古屋でご相談を受けていると、自宅の評価をめぐってこうした声をよくお聞きします。
この記事では、自宅一軒を相続財産として見るときに、何をどう評価していくのかを部品ごとに整理します。土地と建物では物差しがまったく違います。その違いが分かれば、相続税がかかるかどうかの見当も付けやすくなるはずです。
【この記事のポイント】
自宅の評価は、土地と建物を分けて考えるのが出発点です。土地は路線価などをもとに評価し、建物は固定資産税評価額をそのまま使います。建物には倍率を掛けないため、計算はとても単純です。一方、土地は「登記簿の一筆ごと」ではなく「利用のまとまりごと」に評価するため、庭続きの隣地や自宅前の私道の扱いで判断が分かれることがあります。さらに門や塀、庭木、家財道具も相続財産です。自宅の敷地には小規模宅地等の特例という大きな減額の仕組みもありますが、要件は年度によって変わるため、国税庁の公表資料や税理士に確認してください。
今日のおさらい:要点3つ
- 土地と建物は別々に評価する。建物は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になり、倍率は掛けません。
- 土地の評価単位は登記簿の筆ではなく、利用のまとまり。2筆にまたがる自宅は、原則としてまとめて1つの土地として見ます。
- 門・塀・庭木・家財も相続財産。金額は大きくなくても、申告漏れを防ぐために洗い出しておきたい項目です。
この記事の結論
一言でいうと、自宅の評価は「土地は路線価から積み上げ、建物は固定資産税評価額をそのまま使う」という二本立てです。最も重要なのは、土地の評価単位と面積の確認。ここを間違えると、後の計算がすべてずれます。ケースによりますが、敷地が複数の筆にまたがっている、増築の記録がはっきりしない、といった場合は早めに専門家の目を入れる価値があります。
自宅の土地を評価するときの3つの確認点
土地は評価の中心です。順番に押さえていきます。
評価の単位は「筆」ではなく「利用のまとまり」
まず戸惑いやすいのがここです。登記簿では土地は「筆」という単位で管理され、一つの自宅の敷地が2筆、3筆に分かれていることは珍しくありません。
ところが相続税の評価では、筆の数ではなく「利用の単位となっている一区画」ごとに評価します。庭も駐車場も一体で自宅として使っているなら、複数の筆をまとめて一つの土地として見るのが原則です。
逆に、同じ一筆の土地でも、半分を自宅の敷地、半分を人に貸す駐車場として使っているなら、利用のまとまりごとに分けて評価します。よくあるのが、隣に建つアパートの敷地と自宅の敷地を一緒に計算してしまう誤りです。使い方が違えば、評価も分けるのが基本になります。
面積は登記簿の数字でよいのか
次に面積です。原則は、相続が開始した時点における実際の面積によって評価します。
実務では登記簿に記載された地積を使うことが多いのですが、これはあくまで実際の面積とおおむね一致しているという前提があるからです。古くからの土地では、登記簿の面積と実測が食い違っていることがあります。実測すると登記簿より広かった、という話も実際に耳にします。
正直なところ、自宅一軒のためにわざわざ測量するかどうかは、費用と効果のバランスで判断することになります。ただ、明らかに食い違いが疑われる場合や、いずれ売却を考えている場合は、確認しておく意味があります。
自宅前の私道を忘れない
見落とされやすいのが私道です。名古屋の住宅地には、奥まった数軒だけが使う行き止まりの道が数多くあります。この私道の持分が、自宅の土地とは別に登記されていることがあるのです。
私道の評価は、使われ方によって変わります。不特定多数の人が通り抜けに使っているような公共性の高い私道は、評価しないものとして扱われます。一方、特定の数軒だけが通行する私道は、自用地としての価額の30パーセント相当額で評価するのが原則です。さらに、自宅の敷地内にあって自分だけが使う通路であれば、宅地と一体で評価します。
固定資産税が非課税の私道は課税明細書に載らないことがあるため、名寄帳や登記事項証明書と突き合わせて確認しておくと安心です。
建物とその周りにあるものの見方
土地に比べると、建物側の計算はずっと単純です。
建物は固定資産税評価額がそのまま
家屋の相続税評価額は、固定資産税評価額に1.0を掛けた額、つまり固定資産税評価額そのものです。倍率も補正も要りません。毎年届く固定資産税の課税明細書を見れば、その場で分かります。
固定資産税評価額は新築時をピークに、経年に応じて下がっていきます。築年数の経った木造住宅であれば、数百万円あるいはそれ以下になっていることも多く、「まだ住めるのにこんな金額なのか」と驚かれる方もいらっしゃいます。
なお、人に貸している家屋は借家権の分だけ評価が下がりますが、自宅として自分たちで住んでいる建物にはこの減額はありません。
増築や大規模リフォームがあるとき
注意したいのが、増築部分です。増築したのに登記や固定資産税の評価に反映されていない場合、その部分が評価額に含まれていないことがあります。
実は、ここは判断に迷う場面です。単なる内装のやり直しなのか、床面積が増える増築なのかで扱いが変わります。「10年前に離れを建てた」「二世帯住宅に建て替えた部分がある」といった心当たりがあれば、課税明細書の床面積と実際の建物を見比べてみてください。食い違いがあるようなら、税理士に事情を伝えて判断を仰ぐのが安全です。
門や塀、庭木、そして家財
自宅にはまだ続きがあります。門、塀、外構、物置、庭木や庭石といったものは、建物とは別の財産として扱われます。庭園設備については、同じものを取得する場合の価額のおおむね7割を目安に評価するという考え方が用いられます。
家財道具も相続財産です。一つひとつに値段を付けるのは現実的でないため、実務ではまとめて計上することが多い項目です。金額としては大きくならないことがほとんどですが、まったく計上していないと、確認を求められることがあります。
こうした細かな財産をどこまで拾うかは、財産全体の規模によっても変わります。判断のものさしは「税額への影響」と「漏れなく説明できるか」の両方に置くとよいでしょう。
名古屋のある家庭の場面
実は、ここでほっとされる方が多いのです。名古屋市内で親御さんが長年暮らした一戸建てを相続することになったご家庭。「土地も建物もあるから相続税は相当な額になる」と身構えて相談に来られました。
ところが、建物は築年数が経って評価額が下がっており、土地も路線価から計算すると想像より控えめ。さらに同居していたお子さんが敷地を引き継ぐ形なら、居住用の宅地に関する特例を検討できる可能性が出てきました。「うちは大丈夫かもしれない」。そう表情が変わる瞬間に立ち会うたび、まず数字を出すことの大切さを実感します。
評価額が出たあとに考えること
評価は目的ではなく出発点です。
自宅の敷地には大きな減額の仕組みがある
自宅の敷地については、小規模宅地等の特例のうち特定居住用宅地等に該当すれば、330平方メートルまでの部分について評価額を80パーセント減額できる仕組みがあります。影響が非常に大きい制度です。
ただし、誰が引き継ぐか、引き続き住み続けるか、申告期限までに分割が済んでいるかなど、要件は細かく定められています。要件や取扱いは年度によって変わることがあるため、必ず国税庁の公表資料や税理士に確認してください。適用できると決めつけて資金計画を立てるのは避けたいところです。
分け方と申告期限も同時に意識する
自宅は分けにくい財産です。現金のように等分できないため、誰が引き継ぐかで話し合いが長引くこともあります。相続税の申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月。分割が決まらないまま期限を迎えると、使えない特例が出てきます。
まずは自宅の評価額を概算で出し、他の財産と合わせて全体像を見る。そのうえで分け方を考える。この順番で進めると、話し合いが感情論になりにくくなります。
よくある質問
Q1. 建物の評価額はどこで分かりますか?
毎年届く固定資産税の課税明細書に記載されています。市町村の窓口で固定資産評価証明書を取得することもできます。
Q2. 建物に倍率を掛ける必要はありますか?
家屋は固定資産税評価額に1.0を掛けた額、つまりその金額のままです。土地の倍率方式とは別の話なので混同しないでください。
Q3. 敷地が2筆に分かれていたら、別々に計算しますか?
利用のまとまりで判断します。自宅の敷地として一体で使っているなら、原則としてまとめて一つの土地として評価します。
Q4. リフォームをすると評価額は上がりますか?
内装の更新のみなら評価に反映されないことが多く、床面積が増える増築は反映され得ます。判断が分かれるため専門家にご確認ください。
Q5. 庭の物置や車庫も財産になりますか?
はい。建物として評価されるものと、構築物として評価されるものがあります。規模や固定の状況によって扱いが変わります。
Q6. 家財道具はいくらで計上しますか?
一つずつ評価するのではなく、実務ではまとめて計上することが一般的です。金額の目安は財産の規模によって変わります。
Q7. 自宅だけなら相続税はかからないと考えてよいですか?
基礎控除は3,000万円に600万円掛ける法定相続人の数を加えた額です。自宅以外の財産と合算して判断する必要があります。
Q8. 誰に相談すればよいですか?
土地の評価は判断の幅が出やすい領域です。名古屋の相続に強い税理士など、地域の土地事情に慣れた専門家に相談すると安心です。
まとめ
自宅の評価は、土地と建物を分け、そこに私道や外構、家財を足していく作業です。建物は固定資産税評価額をそのまま使えるので難しくありません。難所はやはり土地。評価の単位、実際の面積、私道の扱い。この3点を丁寧に確認するだけで、精度は大きく変わります。
まずは固定資産税の課税明細書と名寄帳を手元に集め、自宅の全体像を見える化してみてください。そのうえで、特例が使えそうか、相続税がかかりそうか。判断に迷う部分が出てきたら、名古屋の相続に強い税理士に早めに相談することをおすすめします。住み慣れた我が家を、迷いなく次の世代へ渡すために、数字を知ることから始めましょう。
