私たちは地域活性化プロジェクトを応援しています。

名古屋で自社株の相続はどう備える?事業承継の第一歩

会社の株は、売れないのに税金だけがかかる財産です

「実家の相続」と聞くと、多くの方が土地と預金を思い浮かべます。ところが会社を経営する家庭では、もう一つ重い財産が隠れています。非上場の自社株です。上場していないので売って現金に換えることは難しいのに、相続税の計算では思いのほか高く評価されることがあります。「株なんて紙切れでしょう」「うちは小さな会社だから関係ない」——こう考えていた方が、いざ試算をして青ざめる。名古屋の中小企業オーナー家庭では、よくある場面です。この記事では、自社株の相続でなぜ資金繰りに困るのか、その負担を和らげる事業承継税制(納税猶予)とはどんな制度か、そして今日から何を始めればよいのかを整理します。

【この記事のポイント】

自社株は換金しにくいのに評価が高くなりやすく、納税資金が不足しがちな財産です。会社の利益や純資産が大きいほど株の評価額は上がり、後継者は多額の相続税を現金で払う場面に直面します。この負担を大きく猶予できるのが事業承継税制の特例措置ですが、計画の提出期限や継続要件があり、途中で外れると猶予が打ち切られるリスクもあります。制度は複雑で改正もされるため、早めに全体像を「見える化」し、名古屋の相続・事業承継に強い専門家と一緒に備えることが第一歩になります。

今日のおさらい:要点3つ

  • 自社株は「売れないのに高く評価される」財産。納税資金の準備が承継準備の中心になる
  • 事業承継税制の特例措置は自社株の税金を大きく猶予できるが、計画提出と継続要件が前提
  • 要件・期限・改正が絡む制度なので、自己判断せず早めに専門家へ相談することが安全策

この記事の結論

一言でいうと、自社株の相続は「評価」と「納税資金」と「制度の期限」を同時に見なければ間に合いません。最も重要なのは、株価がいくらになりそうかを早めに把握し、猶予制度を使うかどうかを含めて選択肢を並べておくことです。正直なところ、相続が起きてから慌てても、使える手はぐっと少なくなります。

自社株の相続は、なぜ資金繰りに困るのか

上場していない株ほど、評価が読みにくい

上場株式なら市場価格がありますが、非上場株式には市場価格がありません。そこで相続税では、決まった方法で評価額を計算します。会社の規模に応じて、同業の上場会社と利益・配当・純資産を比べる「類似業種比準方式」、会社の純資産をもとにする「純資産価額方式」、あるいはその併用で評価するのが原則です。

実は、業績が良く利益や内部留保を積み上げてきた会社ほど、株の評価は高くなりがちです。真面目に経営して黒字を続けてきた結果、株価が上がり、相続税も膨らむ。「頑張ってきたことが、そのまま負担になるのか」と戸惑うオーナーは少なくありません。評価方法や区分は要件で細かく分かれるため、正確な金額は決算内容を見て個別に判断する必要があります。

「現金がない財産」に現金で税金がかかる

相続税は原則として現金で、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に納めます。ところが自社株は簡単に売れません。買い手が限られ、会社の支配権にも関わるため、外部に売却するわけにもいかない。つまり「換金できない財産」に対して「現金の納税」を求められる構図です。

よくあるのが、こんな場面です。名古屋市内で製造業を営むご家庭。父が急逝し、長男が会社と自社株を継ぐことになりました。株の評価額は思った以上に大きく、相続税の試算は数千万円規模。しかし会社にすぐ動かせる現金はなく、長男の個人資産も足りない。「会社は黒字なのに、税金を払う現金だけがない」——この現金と評価のギャップこそ、自社株相続の一番の難所です。

分けにくさが、家族の争いも生む

自社株には、納税だけでなく「分け方」の問題もつきまといます。後継者にだけ株を集めれば経営は安定しますが、他のきょうだいの取り分が減り、不公平感が残ります。逆に株を分散させると、将来の意思決定でもめる火種になりかねません。

ケースによりますが、後継者へ株を集めつつ、他の相続人には預金や生命保険などで配慮する、といったバランス設計が要ります。遺留分にも関わる論点なので、株の承継は税金だけでなく家族全体の設計として考える必要があります。実際の相談でも、「税金の話だと思って来たら、いちばん時間がかかったのは家族の気持ちの整理だった」という声は珍しくありません。株の分け方は数字だけでは割り切れず、誰が会社を継ぎ、他の家族にどう報いるかという合意づくりが土台になります。だからこそ、当事者が元気で話し合える早い段階から着手しておくと、選べる道が広がります。

事業承継税制(納税猶予)で、負担はどこまで軽くなるのか

制度の基本:猶予であって、消滅ではない

自社株の重い税負担を和らげる代表的な仕組みが、法人版の事業承継税制です。一定の要件を満たして非上場株式を贈与・相続で引き継いだ場合、その株式にかかる贈与税・相続税の納税が猶予され、後継者が亡くなるなど一定の事由で最終的に免除される制度です。

特に「特例措置」は、対象となる株式数の上限が撤廃され、猶予割合が100%に拡大された点が大きな特徴です。うまく使えれば、自社株にかかる税金の負担を大きく先送りできます。ただし注意したいのは、これはあくまで「猶予」だということ。要件を守り続けている間は納めなくてよい、という制度であって、無条件に税金が消えるわけではありません。

期限がある:特例措置は「計画」が入口

特例措置には入口の期限があります。適用を受けるには、原則として都道府県へ「特例承継計画」を提出する必要があります。この提出期限は税制改正で延長され、現在は令和9年(2027年)9月30日までとされています。そのうえで、平成30年から令和9年(2027年)12月31日までの贈与・相続が特例措置の対象です。

つまり「使うかどうか」を後回しにしていると、そもそも入口の計画提出に間に合わなくなる恐れがあります。まだ承継の予定が固まっていなくても、選択肢として残しておくために計画を出しておく、という判断もあり得ます。期限や取扱いは今後も見直される可能性があるため、最新の要件は必ず国税庁や専門家に確認してください。

使う前に知っておく注意点

いいことばかりに見える制度ですが、実務では慎重な判断が要ります。適用後は、原則として一定期間、後継者が代表を続け、株式を持ち続けるなどの継続要件があります。要件を外れると猶予が打ち切られ、猶予されていた税額に加えて利子税まで負担することになりかねません。

正直なところ、この「打ち切りリスク」を軽く見て制度に飛びつくのは危険です。将来M&Aや廃業の可能性がある会社では、かえって不利になる場面も考えられます。また、雇用に関する要件はかつてより柔軟に見直されたものの、後継者や会社の状況によって守るべき条件は変わります。特例措置は要件が複雑で、会社の状況によって向き不向きがはっきり分かれます。だからこそ、制度ありきではなく「自社にとって本当に適しているか」を、決算内容や家族構成まで含めて専門家と一緒に見極める工程が欠かせません。細かな要件や取扱いは年度によって変わり得るため、判断の前に国税庁や専門家への確認を挟むことを強くおすすめします。

よくある質問

Q1. 小さな会社でも自社株の相続税はかかりますか?

会社の規模が小さくても、利益や純資産の状況によっては株の評価額が高くなることがあります。相続財産全体が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えれば課税対象です。まず概算評価を確認しましょう。

Q2. 事業承継税制を使えば税金はゼロになりますか?

ゼロではなく「猶予」です。要件を満たす間は納税を先送りでき、一定の事由で最終的に免除されます。ただし途中で要件を外れると、猶予税額と利子税の負担が生じます。

Q3. 特例承継計画はいつまでに出せばよいですか?

特例措置を使うなら、原則として令和9年(2027年)9月30日までに計画を提出する必要があります。期限は改正で延長された経緯があるため、検討中でも早めに専門家へ確認することをおすすめします。

Q4. 後継者がまだ決まっていなくても準備できますか?

できます。まず株価の概算把握と財産全体の見える化から始めれば十分です。後継者選びと並行して、猶予制度を使う余地を残す準備を進める、という順序も現実的です。

Q5. 納税資金はどうやって準備すればよいですか?

生命保険の活用、会社からの役員退職金、計画的な生前贈与など複数の方法があります。どれが適するかは会社と家族の状況しだいです。制度と資金対策はセットで考えるのが安全です。

Q6. 株を後継者に集めると、他のきょうだいと不公平になりませんか?

その懸念は現実によくあります。後継者に株を集めつつ、他の相続人には預金や保険で配慮するなど、遺留分にも目を配った設計が必要です。家族で早めに方針を共有しておくと争いを防ぎやすくなります。

Q7. 自社株の評価は自分で計算できますか?

方式や会社規模の判定が複雑で、正確な評価は容易ではありません。決算書をもとに専門家が計算するのが一般的です。概算だけでも早めに把握しておくと、対策の見通しが立ちます。

Q8. 相談するなら、いつ動くべきですか?

早いほど選べる手が増えます。制度の入口には期限があり、資金準備や家族の合意にも時間がかかります。相続が起きる前の「元気なうち」に一度整理しておくのが理想です。

まとめ

自社株の相続は、土地や預金とは性格が違います。売って現金にしにくいのに評価は高くなりやすく、納税資金という現実的な壁が立ちはだかる。だからこそ、事業承継税制のような猶予制度が用意されていますが、これは要件と期限を守り続けることが前提の、扱いに注意の要る仕組みです。制度は複雑で改正もされるため、細部を自己判断で決め込むのは避けたいところです。

まずは、自社株がいくらくらいに評価されそうかを把握し、財産と納税資金の全体像を「見える化」することから始めてみてください。全体像が見えれば、猶予制度を使うか、資金をどう準備するか、家族でどう分けるかといった選択肢を落ち着いて並べられます。名古屋で自社株や事業承継を含む相続に不安がある方は、早い段階で相続に強い専門家に概算と方針を相談し、事業承継の第一歩を踏み出しておくと安心です。